2004年 11月 12日
スイミング・プール |
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ついに今日、観て来ました。
フランソワ・オゾン、おそるべし・・。
美しすぎる映像や、哀しすぎる音楽もさることながら、
心理描写が秀逸です。
主役は、いまやオゾン組ともいうべき2人の女性。
かたや、美を再発掘され、かたや、美を見出され、
えもいわれぬ存在感がありました。
オゾン監督の存在は、わたしにとって、
【まぼろし】、【8人の女たち】と少しずつ大きくなってきましたが、
【スイミング・プール】によって、揺るぎないものとなりそうです。
よく、オゾンは、女性を美しく撮るといわれますが、
男性から観た女性の色気というより、
同性だからこそ感じる色気を引き出している気がします。
うす曇りのロンドンの街で、真昼からウィスキーを流し込み、
品のないセリフをのたまうトレンチコートのサラ(シャーロット)が、
伸びやかな肢体をもてあまし、南仏の陽のごとく輝く奔放なジュリー(サニエ)に
嫉妬し、惹かれ、抑圧されながら、女性としての自分を取り戻していく・・・
肌のつやを取り戻し、穏やかで優雅な微笑みを取り戻し、
ファッションも淡い優しい色使いに変わっていきます。
が!ヴァージニア・ウルフを思わせるような
ちょっと野暮ったいワンピースやブラウス、
少女のごとく繊細なナイトウェア、ガウン、
筋っぽいふくらはぎ、骨っぽい指先、
サド伯爵の城の話を聞いたときの軽くとりなすような視線こそ、
退廃的で、神経質で、なまめかしくて、匂いたつような色香があると思います。
そして、奔放で破天荒な振る舞いの奥に潜む、
デルヴォーの女たちを思わせるような、ジュリーの遠い目や、
切なく、搾り出すようなあのハスキーボイスにゾクゾクします。
血痕だとか、謎解きだとか、そのあたりはどうでもいい!感じに割愛されていて、
それよりもむしろ、サラの心の動きに合わせて、微妙に変化していく、
あの美しい旋律が、この作品の緊張感を高めていました。
映画館で観るべき映画だと思います。
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by porenar
| 2004-11-12 23:46
| film